- 2022.3.27
コラボレーション
高齢者の介護施設とマグロの解体ショーは、とても相性の良い組み合わせだった。
2022年2月、三重県津市にある介護施設「虹の夢津」でマグロの解体ショーが行われた。なぜ実施されたのか? 実施してどうだったのか? 専務取締役の平松さんと職員の山田さんに伺った。
コロナ禍で家族にも会えず、ストレスが溜まる入居者さんを喜ばせたかった。
私たちは、入居者さんの笑顔や満足感を大切にしています。一方で、コロナ禍で入居者さんはご家族に会えない状況が続く中、ストレスも溜まっていました。気晴らしに出かけることができる、いい場所を探している中、程よい距離感の場所にVISON(ビソン)(※)ができたので、社⻑や何人かのスタッフと見学に行きました。
偶然立ち寄った「脇口の鮪(マグロ)」でお食事をいただき、名刺交換をしていろいろと話す中で、入居者さんにマグロを振る舞えるという話になったのです。その後、施設内で解体ショーもできると聞きました。私たちも入居者さんに、どうにかして食事を楽しんでいただきたいと思っていたし、お刺身を食べたいという意見が多いので、実施することにしました。
※三重県の多気町にある商業リゾート施設
マグロの解体ショー当日は、入居者さんの笑顔が溢れる1日に。
実施日は入居者さんにとっては、とても印象に残る1日になったようで、施設内に笑顔が溢れていました。普段は食が進まない方も、マグロのお刺身はたくさん食べたと聞きました。新鮮なお魚はどんな方も好きだと改めてわかりましたし、みんなで楽しく食事ができたのも良かったですね!職員も新鮮なマグロを食べて、喜んでいました。
施設内には、ほとんど部屋に籠りきりの方もいます。そんな方も解体ショーがあれば部屋から出てくる。それがすごくいい。しかも、目の前で解体されたマグロを今すぐに食べられる。どう考えても新鮮です。お刺身がさらに美味しく感じる。入居者の方々も感覚的にそれがわかるだろうし、五感が刺激されるので、とてもいい体験だと思いました。
食べたものを忘れる認知症の方が、マグロの味を覚えていた。
普段はおかわりをしない人がおかわりをする。そんなことが普通に起こっていたし、さらに驚きがありました。認知症の人は食べたものをすぐに忘れてしまいます。でもその方が「今日のマグロは美味しかったな」とイベントから何時間か経った夕方に言ったのです。食べたことすら忘れるのに、何を食べたかや、美味しかったことを覚えていた。それほど印象に残ったのでしょうね。
「ここにいて良かったな」と入居者さんに思ってもらうために。
コロナ禍以降、ご家族と会えないことが入居者さん本人にとって、とても良くないとわかりました。ご本人の状態も落ちるし、ご家族も仕方ないと諦めていく。でもそう思わせているのは、実は施設を運営している私たち。人生の最後をお預かりしているのに、何のために仕事をしているのだろうと思ってしまいます。「ここはしんどいな。家族にも会えなくて」ではなく、「ここにいて良かったな」と入居者さんに思ってもらいたい。
マスクや消毒などのコロナ対策はしっかり行いつつ、この施設で居心地良く、楽しんで過ごしてもらうための取り組みが必要だと、マグロの解体ショーを実施して改めて思いました。今後もいろいろと進めていきたいと思います。他の施設でもぜひ、マグロの解体ショーを実施してほしいですね! 高齢者の方は、マグロの解体ショーを今までに見る機会が意外になかったと思うので、興味を持ってご覧になると思います。そして何より新鮮なマグロは、笑顔や元気の源になるのでお薦めです。
(取材、文章作成:TUNA×TUNA 副編集長 横谷真一)
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